「なぜ宇宙は人類をつくったのか」桜井邦朋
倫理観の欠けた知性=ヒト
「なぜ宇宙は人類をつくったのか」 桜井邦朋著・祥伝社
現代物理学が齎した功罪、およびその歴史、次いで生命誕生の起源~人類が知性を持つに至った経緯、果てに人は神となりうるのかという哲学的命題までを一連の流れで論じられています。
人間がここまで知性を得られたのには「ことば」の力が大きく、そしてそのことばには「E言語(外言語)」と「I言語(内言語)」があるとしたチョムスキーやパブロフの話が興味深かった。
それから、今現在の時間を共有している人間以外の生き物全て、同じ宇宙時間を生きてきたものたちであるのだから、人間だけがより高等で貴い存在だという訳では無いというのもなるほどなと大きく頷けるものであった。
が。
そこから後半からラストにかけてが凄い。
物理化学信奉と人間批判
4章が「なぜ人類は知性を持ったのか」であり5章は「人は”神”に代わりうるか」なのだが、そのあたりから人間批判が炸裂する。
まず理論物理学者に対しても「自分たちが世界を知り尽くしているという考え方」をしてはならないという警告をしているが、それ以外の人間に対しても、政治家たちがその人数の1割でもいいから物理に興味関心を持ってくれたら争いは激減する筈なのにと嘆いてみたり、科学嫌いの人間に未来はないと一刀両断してみたり、いわば全方向に牙をむいているのだ。
そして原子力の開発や宇宙科学の開発も、結局のところは政治家が戦争の為に力を入れているに過ぎないとしている所にも、「化学は悪くない。扱う政治家が悪いのだ」と言わんばかりの言い回し。そして科学界にも論文ねつ造など、腐敗は蔓延しているとも述べる。
最後ほぼ愚痴を聞かされてる気分になったのですがどうなんだコレ(;^_^A
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この書籍では人間が現れそして知性を持った事も全て偶然以外の何物でもないと結論付けられているし、科学的に見るとそれは至極当然なのだと思うが、ならば人間がどのように進化していこうとも、それは偶然に依るものが大きくなるのではないかなとも思えてならないのです。
化学信奉大いに結構なのですが、「世界が悪い方向に向かっているのは多くの人が物理学に興味関心がなさすぎるからだ」と断定しているのはどうなんだろうねという印象でした。戦争を引き起こしている人の全てが物理に関心がないわけでもないだろうし、物理が好きだからって全員が平和主義でもないかもしれない。
『知性は理性であることを保証してはくれないのである』
まさにこの言葉の通りであるとは思いましたが。