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読書感想ブログ

「死ぬまでに学びたい5つの物理学」山口栄一

ニュートンの法則?引力だろ?知ってるよ。」

ではどうして遠く離れているものが静止している物体を動かしているのか説明できますか?物理って面白いですよね。でもこんな事どうやって考え付いたんだろう。というのが今回の1冊。

死ぬまでに学びたい5つの物理学 (筑摩選書)

死ぬまでに学びたい5つの物理学 (筑摩選書)

 

東大卒理学博士でもある筆者が「美しい」と感じた物理学を紹介しています。

といっても数式は多くは登場せず、どちらかといえばその法則を発見した物理学者たちがどういった経緯を経てその理論に辿り着いたのかに焦点が当てられています。

 

メインとなる5つは

で構成されています。

この本の素晴らしい所はやはりその読みやすさでしょう。

幼い頃に母を亡くした辛さを自分自身が別世界にいるように感じた筆者がある時物理学と出会いこの世界があまりに美しい法則で出来ていると知り感動して物理学の道に進んだという経緯から、物理を専攻としない人たちにこそこの世界の美しさを知ってもらいたく活動されている筆者ならではの視点だからこそ、物理を心得ていない私のような者にも親しみやすく書かれているのだと思います。

 

どちらかというと偉人伝のような感じもします。1章につき1部から3部構成になっているのですが、だいたい法則そのものに割くのは1部のみで、あとはその人の人物像や開発に至った経緯、その当時の社会情勢などの紹介に充てられています。

 

パラダイムの破壊者たちに訪れる様々な困難と悲劇的な末路はドラマティックで波乱に満ちています。しかしそれを淡々としかし敬愛を込めて語る筆者の深い知識と物理学に対する愛情の様なものがとても心地よく伝わる1冊になっています。

 

どちらかというと物理が苦手、理系より文系な人にもおススメです。

 

 

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死という言葉はインパクトが強く、この「死ぬまでに見たい、行きたい、食べたい」などがこの頃(2014年当時)結構頻繁に使われましたね。

でもこの筆者に於いてこの言葉は大げさな表現ではなかったようです。

10代で母を亡くすというのはそれだけの衝撃があると思うのです。

そして灰色だった彼の世界に色を蘇らせてくれた物理学のすばらしさ、そしてそれ以降の彼が見ている世界はもしかすると絶対音感の人が聴いている音の様に、全てのものに数式が重なって見えているのかもしれないと思いました。

そしてその世界を美しいと讃える筆者の見ている世界を垣間見てみたいと感じられる1冊でした。